「先生」って呼ばせないで

たしかに温もりを感じる。


「のんちゃん、大丈夫か。俺の声、聞こえる?」


優しい声。


爽やかな香り。


「廉…くん…」


「よかった…。歩けそう?」


真っ白だった視界に色が戻ってくる。


呼吸のしづらさは変わらないけど、背中を擦る一定のリズムが心地よくて、緊張状態がほぐれていく。


久しぶりにパニックを起こしたらしい。


テニスボールの音が聞こえたけど、あれは全部幻聴。


遠くに走って逃げたつもりでいたけど、実際は校舎を出てすぐのところで過呼吸になっていた。


グラウンドでは普通に開会式が行われている。


「救護室行く?それとも怜に連絡した方がいい?」


「ん…お兄ちゃんから聞いてたの…?」