「先生」って呼ばせないで

「じゃあ気をつけてな。なんかあれば連絡して。すぐ行くから」


「うん。ありがとう。行ってくるね」


助手席のドアに手をかける。


このドアを押せばテニス会場が待っている。


「…無理すんなよ。怖いなら無理して行かなくても―」


「ううん。大丈夫」


遥斗先輩に会いたいし、いつかは乗り越えるべきこと。


今日はそのいい機会だと思う。


「いってきます」


「うん。いってらっしゃい」


優しい頷きを背に、思い切ってドアを開ける。


眩い光と共にグラウンドが飛び込んできた。


ジャリ…


スニーカーと砂が擦れる。


「大丈夫大丈夫…」


一歩一歩会場に入り込んでいく。


応援ギャラリーは3枚のコートを取り囲むひな壇状になっていて、日除けのテントが張られている。


真ん中付近に同じ高校の人を見つけたから、私もそこに向かってみよう。


応援席側に来るのは初めてだ。