「先生」って呼ばせないで


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そんなこんなで受けたテストの手応えはあるはずもなく、撃沈したまま職員室に向かう。


「失礼しまーす。2年3組の一宮です。伊吹先生いらっしゃいますか?」


職員室に入るときの定型文を早口で述べ、中を覗き込む。


廉くんは同じ数学の山本優香(やまもとゆうか)先生と談笑しているところっぽい。


山本先生は男子に大人気の美人先生。


なんかモヤモヤする…。


「伊吹先生ーー」


2度目の呼びかけでようやく気づいてくれた。


「ごめん、おまたせ。どうした?」


スマホを返して欲しくて訪ねたのに、手ぶらで廊下に出てくる廉くん。


「スマホ返してほしいんだけど」


「あぁ。ちょっと待ってて」


すぐに職員室に引っ込む。


山本先生との談笑で忘れちゃった?


自分が取りに来いって言ったのに、スマホ没収したことすら忘れたの?


私とは楽しそうに話してくれないのに、山本先生とはとても楽しそうだった。