「先生」って呼ばせないで

「…ごめん。忙しいから」


「…そっか」


変わっちゃったね…。


大人になるってこういうことなのかな。


昔みたいにはいかないんだね。


荷物を持って立ち上がる。


「じゃあね、伊吹先生」


「じゃあね、じゃなくて“さようなら”な」


…なによ。


せっかく伊吹先生って呼んだのに。


呼びたくない呼び方してるのに。


そこには触れてくれないの?


伊吹先生って呼ぶのが当たり前だから?


廉くん呼びは封印しなきゃいけないから?


「さようなら、廉くん」


「ったく。アイツがいつまでも甘やかすからこんな頑固娘に育つんだよ…」


「なに?何か言った?」


小声で呟く声が聞こえた気がしたけど。


「別に。気をつけて帰れよ」


「門まで送ってくれないの?」


「…わかったよ。門までな」


めんどくさい奴って思われたかな。


でも、好きなんだもん。


昔から大好きな人。


今さら他人のようにはなりたくない。