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恋とは、心とは、自分ではままならぬもので難しいものだ。
一度、エイダンにまた恋してしまったと気づいてしまうと、たちまちこの間まで大丈夫だったことが、全部ダメになった。
私を見つめるそのアメジスト色の瞳も、端正な顔から作られる微笑みも、吐息さえも愛おしい。
何を言われても、何をされても、心臓が跳ね、嬉しいのだと歌う。
あの恋心を消す前と何も変わらない私がまた出来上がってしまった。
だが、この恋心をエイダンに再び悟られる訳にはいかない。
エイダンは私が好きなわけではない。私と同じではない。
ただ、私が苦しむ様が楽しくて楽しくて仕方ないのだ。
今のエイダンは私を試すようにいろいろな甘い行動を気まぐれにしてくるが、そこに他意はない。
そのことがまた私を苦しめさせた。
「浮かない顔ね」
私の顔に筆を走らせていたアランがふと手を止め、私を心配そうに見つめる。
私は今、この後行われる外交の席にこの国の最高階級の魔法使いたちの秘書官として参加する準備をしていた。
その準備、化粧を施してくれているのが、アランだ。
魔法でも化粧はできるみたいだが、繊細な色合いや輝き、陰影を表現するには魔法よりも直接手でする方がいいらしく、アランは今、手ずからず私を華やかにしてくれていた。
国を代表して他国の方々と交流するのだ。
少しでもそれらしくなくてはならない。



