二人は、高校時代に初めて、この海にやって来た。

今でこそ、分別ある大人に成長した二人だが、かつて、若さゆえか、互いに我が儘にしか生きられない季節もあった。

お互い初恋だったのに、相手を想うタイミングが合わずに、長い間、すれ違い続けたのだ。

最初に、一方的な恋に夢中になったのは、中学時代のリナのほう。

しかし二人は、かなり気まずい別れをし、高校3年で再会した時には、園田のほうが、一方的にリナにのめり込んだ。

そして園田は、高校生同士のプレゼントには、とても相応しくないような、高級なワンピースをリナに渡そうとしたが、リナはそれを受け取ることは出来なかった。

リナは東京で、園田は名古屋で、別々の青春時代があり、25才の頃、他に客の居ない名画座で、期せずして二人は再会。

これまで、ずっとすれ違い続けた二人の恋心がひとつに重なり、紆余曲折を経て、ようやく、本当に相思相愛の恋人になることが出来た。