「やっぱり、彼は少しおかしいと思ってたんだよ…年収1000万超で、お前よりも20歳も歳下のハンサムなんて、結婚詐欺じゃないかと言ったのに…」

父親と思しき老人が嘆く。

「今さら言ったって、おせぇんだよ!」

結婚詐欺にあった50代後半ぐらいの花嫁は、怒り心頭に発しているが、何も年老いた両親に当たらなくても…と、リナは密かに思った。

二人を案内してくれていた式場のスタッフも、かなり気まずそうにしている。

年甲斐もなくギャアギャア喚くダミ声は、おさまる気配もないので、園田がリナの耳元で、

「次のところ行こうか…」

そう言い、二人は式場スタッフに挨拶して出ていった。

「式場には何の罪もないんだけどさ。あんな光景見たら、正直、ここで挙式ってのは幸先悪い感じだよなぁ…」

車に戻り、園田が苦笑いで呟く。

「確かにちょっと、あんな光景見ることってないものね。これから結婚するって人は大抵、縁起悪いことは避けたがるだろうし、かなりの営業妨害しちゃったね、あの女の人」