珍しく不貞腐れる夫を見て、陽子はクスクス笑っている。

「なんだよ…陽子こそ、リナが大学で上京するって時、散々泣いてただろ?」

「それはそうだけど、あのときは冷静だった青山くんなのに、リナを嫁にやるとなると話は別なんだなぁ、って」

「そんなもんですよ!男親なんてものは」

青山は、陽子に背中を向けて、無理にでも眠ろうとしたが、その夜はなかなか寝つけなかった。

陽子は陽子で、自分が結婚するときも、親はこんな気持ちだったのだろうか?と、すっかり老いた両親へと想いを馳せるのであった。