翌日を迎えても、お母さんはまだ不機嫌だった。

お互い顔を合わせることもなく、朝食の時もただ黙々と食べて、支度を済ませるなり行ってきますを言わずに学校へと向かった。

ーー『これ以上、楓くんと仲良くなるのはやめなさい』

こんなこと言われたなんて楓くんには言えない。

それに、お母さんからビンタされたなんて言えるわけがない。

楓くんにどう謝ればいいだろう?

おばさんにも……。

どうしたら、お母さんに分かってもらえるのだろう?

昨日の夜からずっと頭を悩ませては、答えを出せないまま一睡もできずに今日を迎えてしまった。

教室に着いて、自分の席へとゆっくり向かう。

隣の席をチラッと見ると楓くんはもうすでにいて、私が来たことに気付いては彼と目が合った。

私たちの間に、少し気まずい雰囲気が流れる。

「……おはよう、小春」

先に声をかけたのは楓くんで、私に挨拶をしてくれたものの、その声や表情は見るからに元気がなかった。

それはそうだろう。

昨日、あんなことがあったから。

『おはよう、楓くん……』

今まで、何度もしてきた手話を使って挨拶を返した。