5月。

ゴールデンウィークを終えて数日経った今。

「最近さ、小春の気持ちが読み取れるようになってきた」

朝、学校で楓くんに会って早々、彼はこんなことを言った。

楓くんと友達になって、まだ日は浅い。

ちなみに、私が彼のことを“楓くん”と呼ぶのは、友達になったあの日、楓くんが『友達になったんだから下の名前で呼ぼう』と言ったからだ。

「同じ頷きでも、朝、俺に“うん”と頷くのは『おはよう』の意味で、帰る時の“うん”は『また明日』の意味」

……‼︎

楓くんが言っていることが的確すぎて、まるでエスパーなのではって思うぐらい。

「ほかにも、『ありがとう』や『それで合ってる』とかの“うん”だったり、『違うよ』の首振り。小春の言いたいことなんとなく分かるようになってきた」

楓くん、凄い!

凄すぎるよ。

思わず楓くんに感心する。

「なぁ、小春。最近は大丈夫か?」

ふと、小声で心配そうに尋ねる楓くんに、私は“大丈夫”というふうに頷きを返した。

「そっか。それなら良かった」

楓くんのおかげで、もういじめられてないよ。

物を隠されることもなくなったし、なにか言われることもなくなった。

あの2人はだいぶ大人しくなったと思う。