婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2

「私が一番役立たずかもしれません……」
「そんなことございませんわ。それぞれ得意分野が誓いますもの。わたくしは治癒院関係の案件はお手上げですのよ」
「そうですよ。私は軍事関係や地方の案件なら判断できますが、他のことには疎いのでお役に立てません」

 イライザ様もジャンヌ様も優しく励ましてくれる。ジャンヌ様は以前から面識はあったけど、コートデール領の認定試験後から私にとてもよくしてくれていた。

「ありがとうございます。それでは、よろしくお願いします」

 こうして私たちは王妃様から渡された書類を次々と捌いていった。完璧に仕上がった書類を王妃様に提出すると、ブルブルと震え始めた。

「嘘よ……そんなわけないわ……! まさか、これも!? そんな、できるはずないのに……!」

 どうやら私が失敗するのを見込んで仕事を任せたようだが、思惑が外れてしまったらしい。

「ありえないわ! どんな卑怯な手を使ったのよ!? 正直に言いなさい!!」
「卑怯な手は使っておりません。正当な方法で処理いたしました」

 正確には正当に雇われた文官に頼って処理したけれど、嘘ではない。フィル様からも文官のことは伏せておくように言われている。

 よほど悔しかったのか王妃様が地団駄を踏んで喚き始めたので、そっと部屋を後にした。