婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2

 黒いモヤが胸に広がり私はブリジット様から視線を逸らす。そんな変化を敏感に察したフィル様は、私の額に軽く口付けを落とした。

「僕はラティしか見ていないから安心して」

 そう言われたけれど私はぎこちなく微笑むことしかできず、フォル様の執務室から逃げるように立ち去った。
 その日の昼食後、フィル様は毒物チェックの前にとても不穏な言葉を口にした。

「もっと僕の愛をわからせないとダメかな?」
「え? どういうことでしょうか?」
「いや、書類を持ってきた時のラティの様子がおかしかったから」

 黒い笑顔のフィル様にいとも簡単にソファーに押し倒され、両腕はフィル様の左手で押さえつけられてしまった。

「フィル様!? なにを——」
「ラティには言葉や態度で愛を伝えているつもりだけど、足りないから不安になるんだよね?」
「そ、そんなことは……」
「だから、そんな気が起きないくらい愛情を示せば問題ないよね?」