「ふふ、また僕に見惚れていたの?」
「……いえ、そんなことありません」
「そう? 潤んだ瞳で見つめられていたから、てっきり僕に食べさせてほしいのかと思ったよ」

 フィル様のスカイブルーの瞳が獲物を狙うように、私を見つめる。これは、このままなにも考えずに答えたら、とんでもないことになると直感した。

「待ってください、フィル様。食事は自分で食べられます。まだ途中ですし、先にこちらをいただきたいです」
「大丈夫、そっちも僕が食べさせてあげるから」
「いえ、結構です」
「遠慮しなくてもいいんだよ?」
「遠慮なんてしてませんし、それ以上言うなら食後の儀式はなしにします」

 食後の儀式とは、以前フィル様が私の様子を見にくるせいで、政務の皺寄せがアイザック様にいったことがあった。

 それを解消しようとしたら食後に私からフィル様へ口付けすることになってしまったのだ。こんな恥ずかしい儀式を終わらせたくて、妃教育を一刻も早く終わらせようと必死になっている。そのおかげで、この半年で王太子妃教育はかなり進んだ。