「まったく専属治癒士だからといって、王妃であるわたくしの命令を無視するなんて、どういうことなの!?」
「申し訳ございません」

 王命が下ったので王妃様の執務室へ朝一番で来たが執務机の前に立たされ、もうかれこれ一時間はこうして叱責されている。

 喉が渇いたのか王妃様はひと口お茶を飲んで、大きくため息を吐いた。

「次にやったら婚約者として不適格だと国議にかけてもらいますからね!」
「はい、大変申し訳ございませんでした」

 ようやく叱責が終わり、いよいよ妃教育が始まる。例えフィル様へ親としての愛情を与えていなくとも、この国の王妃様には変わりない。私は教えてもらったことを聞き逃すまいと身構えた。

「では、ちょうどいい時間だから、この書類をフィルレスに届けてちょうだい」
「はい、承知いたしました」
「必ずここへ戻ってきて報告するのよ!」
「かしこまりました」

 王妃様に念押しされて私はフィル様の執務室へ向かう。今日もアルテミオ様が付き添うようで、私はアルテミオ様に話しかけた。