婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2

「……ラティ、ごめんね。奴らが暴走してしまったけど、相応の報いを受けさせるから」

 フィル様の言葉に私は胸を抉られたようだった。
 実の両親を『奴ら』と呼び、そこにはまるで家族の情が感じられない。

 私が国王陛下や王妃様と関わるのを嫌がった理由はそこにあるのかと察した。フィル様の手を取り後ろを振り向くと、お腹に回されていた腕は簡単に解ける。

 愛しい婚約者は表情が抜け落ち、空色の瞳からは光が消えていた。なにかを求めているような、あきらめたような絶望に近い悲しみを感じて胸がぎゅっと締めつけられる。

「私はこれでも治癒室で鍛えられたので、多少のことではへこたれません。でも、フィル様が悲しむのは耐えられません」
「……悲しいわけじゃない。別に奴らが——」

 フィル様がなにか言いかけたけれど、私はそれを遮って言いたいことを口にした。

「私はフィル様を愛しています」

 空色の瞳が大きく見開いていく。視線を逸らさず、もう一度言葉にして伝える。

「誰よりも大切ですし、もしフィル様が没落しても、平民になっても大丈夫です。なんなら私が養ってあげます。これからも変わらずに、ずっとそばにいます」