婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2

「ラティ」

 耳元で囁くように名前を呼ばれ、私の心臓は壊れたみたいに鼓動している。空のように澄んだ青い瞳が私をジッと見つめていた。

「ごめん。僕の情報収集が生ぬるかった。これからはこんなことがないようにするから」
「いいえ、大丈夫です。ご挨拶できるいい機会でしたから」
「でも、お詫びに僕の愛を注いでもいいかな? なにがあってもラティが僕の気持ちを疑わないように、ね?」

 フィル様はそう言いながら私の頬やこめかみに優しくキスを落としてくる。いったいどのような方法で愛を注ぐのか、怖くて聞けない。

「え、あの、フィル様の気持ちを疑ったことなんてありませんから! 大丈夫ですから、離してください」
「やだ。僕がラティを離したくない」
「そ……っ!」

 反論しようとして、フィル様の熱い口付けに言葉を続けられなかった。

 食後の毒物チェックでも手を抜いていたのかと思うほど、情熱的に甘く激しくフィル様は私に愛を注ぐ。すっかり力が入らなくなった頃、やっと唇を解放された。

「ラティ、大丈夫? ちょっと止まらなくなっちゃって」
「フィル様……もう、やり過ぎです……!」

 涙目になってフィル様を睨みつけるけれど、まったく効果がないようでニコニコと上機嫌な笑顔でソファーまでお姫様抱っこで運ばれた。