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 フィル様に私の想いを伝え、三大公爵から合格判定をもぎ取ってから早くも半年が過ぎた。

 本格的に王太子妃教育が始まり、今はもうずっとフィル様のそばについていられない。そのため食事はフィル様と過ごす貴重な時間となっていた。

「ラティ、今日の予定は?」
「はい、今日は諸外国の国勢とヒューデントの関係性や、王太子妃としてのマナーのテストです。昼食は……」
「うん、もしタイミングがあったら一緒に食べよう」
「ありがとうございます。一緒に食事ができるように頑張りますね」

 柔らかな朝の光が差し込む食堂で、私の予定をフィル様に伝えるのが日課になっている。

 艶々の黒髪はフィル様の腹黒さと落ち着きを体現し、澄んだ空のように青い瞳は惹き込まれそうになる。滑らかな肌に落ちるまつ毛の影すら絵になっていた。相変わらず神々しいフィル様に時折食事の手が止まってしまう。

「ラティ」
「は——んぐっ」

 返事をしようと口を開いたところに、朝摘みの新鮮なカット苺を放り込まれる。ある時から私にこうやって食べさせるのがフィル様の趣味になったらしい。