「ふうん、そういう流れだったんだ」
「はい。あの、なにか予定と違うのですか?」
「そもそも、王太子妃の教育を王妃が務める慣習なんてないよ。たまにお茶を飲んだり、相談相手になるくらいだね。国王の手腕や、王妃と我が国の関係性によって求められる役割が異なるから、専門の教師をつけることになっているんだ」

 フィル様の話を聞いてなるほどと思った。確かに外交が得意な国王もいれば、戦が得意な国王もいるだろう。

 そして王妃が他国から嫁いだのであれば、その国との架け橋になることを求められているということだ。自国の貴族であれば国王の地盤固めを求められる。

 その時々の状況によって変わるだから、王妃様からすべてを学ぶのは難しいかもしれない。

「では、今回はどうして王妃様が教師になられたのですか?」

 私はカールセン家の血を引いている。フィル様は政治も得意だし、国民の人気も高い。それに魔力だって歴代王族の中でもトップクラスだ。

 そう考えると私に求められているのは、治癒力だと察しがつく。どんな怪我や病でも私が治療することで、フィル様は政務に集中できるのだ。

 もはや誰も逆らえないほど有能な国王の誕生ではないだろうか。