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 ブリジット様の認定試験が始まり、毎日のようにフィル様の執務室へやってきていると耳にした。

 移動の際に貴族たちが話していたし、妃教育の教師たちも熱心なブリジット様に負けないようにと言われている。だから正式な婚約者は私なんだと自分に言い聞かせて、不安になる気持ちを抑え込んでいた。

 朝食の後はいつものようにフィル様と甘い時間を過ごして、それぞれ目的の部屋へ向かう。今日は私の肩にバハムートがちょこんと乗っていた。

「はあ、集中しないと……フィル様にふさわしい妻になるために頑張るのよ……!」
《ラティシア。お前はよく頑張っている》
「バハムート……ありがとう。そう言ってもらえると元気がでるわ」
《褒美に今夜は散歩に連れていってやろう》
「え、いいの!? あ、でもフィル様に許可を……」
《主人も一緒だ。こうして主人と離れた後に元気がないと心配しておった》

 バハムートの言葉にポカポカと心が温かくなる。だが、どうしても気になる言葉があった。

「ねえ、どうしてフィル様は離れた後に私の元気がないと知っているの?」
《……ラティシアはなにも心配せずともよい》
「口止めされているのね……」