わたくしが唯一許せないのが、長男の婚約者があのカールセン伯爵家の娘だということだ。少し前に爵位を継いだと聞いたが、治癒魔法しか使えない家門など到底受け入れられない。高貴な血統にあんな出来損ないの女の血など混ざってはたまらないのだ。

「ふふふ、どうやってあの女を排除しようかしらね……」

 長男の婚約者には聖女であり侯爵令嬢のブリジットがふさわしいだろう。

 じわじわと追い詰めて辞退するように仕向けようか。それとも、わたくしの開くお茶会で恥をかかせて立場をなくしてやろうか。妃教育だと言って無理難題を申しつけて困っているのを見るのも楽しそうだ。

 いっそのこと全部やってみるのもいいかもしれない。

「まあ、王太子の婚約者なら、わたくしの言うことにすべて従ってもらわなくてはね。そう思うでしょう? アルテミオ」
「はい。母上のおっしゃる通りです」

 いつもこうしてわたくしに寄り添い、思うままに動いてくれるかわいい手駒に声をかけた。