光を浴びた美しくしなやかな躯体、伏せられた瞳を飾る銀の長いまつ毛、きらきらと輝くたてがみ。どれも現実離れした幻想的な姿に思わず見惚(みと)れる。

「よし、ではユニコーン。わしと主従契約を結んでくれ」
《…………》

 しばし沈黙が流れ、やがてユニコーンは大きくいなないた。前足を高く上げ勢いよく床に下ろしたと同時に、バリンッと音が響き透明の小さな欠片がユニコーンの周りを覆う。

 小さな欠片が空気に溶けてなにも見えなくなると、背中には見事な銀翼が生えていた。ユニコーンはわしと同じ青い瞳でこちらを見つめている。

「陛下……お見事です! 幻獣と契約を結ばれ神獣ユニコーンへと進化を遂げました。この翼が神獣の証でございます!」
「そ、そうか……契約を結べたのだな! ははは……これでわしの治世は確固たるものになったぞ!」

 ユニコーンがわしの下僕になったのだ。これほど素晴らしい日がやってくるとは想像もできなかった。これでいよいよ本格的に動けると王妃にも伝えねば。

「国王陛下、さすがでございます。わたしも今までにも増して、フィルレス様の婚約者になるべく積極的に行動いたしますわ」
「うむ、ブリジット、頼んだぞ。王太子にふさわしい婚約者は聖女しかおらんのだ」
「はい、お任せくださいませ」

 そう言って笑みを浮かべる聖女に大きな期待を寄せつつ、王妃にも知らせを出した。身の程知らずな女と、今まで散々好きにしてきた化け物には現実をわからせる必要がある。

 これからは、わしの時代が来るのだ。化け物に怯えることのない自由な日々を想像して心弾んだ。