それからほんの二時間ほどで聖女が執務室へやってきた。

「国王陛下、わたしをお呼びだと伺いまいりました。本日はどのようなご用件でしょうか」

 落ち着かない様子のブリジットがわしの机の前に立つ。謁見室を使わなかったのは、あの化け物に情報が漏れるのを防ぐためだ。切り札は隠し持っておきたい。

「我がヒューデント王国が太陽の創世神の末裔であることは知っているであろう。そこでわしとユニコーンが主従契約することによって、幻獣の秘めたる力を使えるようになるのだ」
「そんなことが可能なのですか?」
「うむ、神の末裔である王族ならば可能だ。浄化の妨げにもならぬので問題はないだろう」

 少し考え込んだ後、ブリジットは笑みを浮かべてユニコーンを呼び出した。

「ユニコーン、太陽の創世神の末裔と主従契約を結んでちょうだい。そうしたらこの世界のために、貴方の秘めた力を使えるようになるの」

 なにもない空間が揺らめき、シャランと音を立ててユニコーンが姿を現す。普段は結界で身を包んでいるが、常に聖女に寄り添っていたようだ。