毒を盛られてからのフィル様の過保護っぷりは、はっきり言って限度を超えている。それにフィル様に内緒でことを進められる気がしない。

「……そうですね。私が浅はかでした」
「ご理解いただけてなによりですわ」

 にっこり微笑んだイライザ様の笑顔が、食事の時のフィル様の笑顔と重なる。なんとも言えない気持ちでいると、グラントリー様が口を開いた。

「そういえば、ラティシア。今日は伝えたいことがあって来たんだ」
「伝えたいことですか?」
「ああ、やっとコートデール公爵家の三女ジャンヌと婚約が決まった。口添えしてくれて本当に感謝する」
「まあ、そうでしたか! それはおめでとうございます!」

 エルビーナ様の留学にともなって、グラントリー様もヒューデント王国で花嫁探しを続けていたが、なんとジャンヌ様に一目惚れしたらしく仲介を頼まれていた。

 コートデール公爵へ手紙を書き、今ではグラントリー様も心を改めたのでよき夫になるだろうとバックアップしたのだ。
 おふたりとも憑き物が落ちたみたいに穏やかになっていたし、皇族として教育されただけあって、立ち居振る舞いも完璧だったので心から応援することができた。