「えっ、フィルレス様!? 結界を破ったのですね……本当に素晴らしい才能ですわ」

 最初は焦った様子だったが、フィル様の実力を垣間見てブリジット様が頬を染め熱のこもった視線を向ける。

 ついさっきまで私に向けていた態度とはガラリと雰囲気が変わった。今のブリジット様は、清楚で儚げで思わず手を差し伸べたくなる。

 いくらフィル様が冷たい態度を取ったとしても、王命が下されてしまったら私にはどうにもできない。ブリジット様の様子を見て、チリチリと焦げ付くような焦燥感が胸に込み上げた。

「オズバーン侯爵令嬢。ラティになにをしていた」
「申し訳ございません、ただお話をしていただけなのです。わたしが婚約者候補になりましたのでご挨拶をさせていただきました」
「それは不要だし、僕の正式な婚約者はラティだけだ」
「そうですわね。ですが試験に合格すれば、家格も素質もわたしの方が優れているのですもの、すぐに交代することになるでしょう。ですからラティシア様に前もってお伝えしたかったのです」