婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2

 あの時、毒で倒れた時に見た幻覚——!?
 幻覚だと持っていたけれど、本当にそうだったのか? それとも、このユニコーンが姿を現したのか?

「ユニコーン、この部屋を結界で囲ってちょうだい。邪魔されたくないの」

 ユニコーンが大きく首を振ると、角の先から七色の光が走り部屋の壁を覆い尽くしていった。隅々まで七色の光が広がると、光は消えてもとの状態に戻る。

 ハッとして部屋から出ようとしても、透明な壁に阻まれて扉は開かない。

「ここから出してください。他の患者様の診察もあります」
「それでしたらこの王城からすぐに立ち去るとお約束いただけますか? きっとわたしがフィルレス様の新しい婚約者として発表されるのも、遠いことではございませんので」
「……約束はできません。私もフィル様と婚約について正式な書面でサインしています。そちらがある限り——」
「婚約は相手に瑕疵(かし)があれば破棄することもできますわ。離縁だってできる世の中ですもの、絶対なんてないでしょう?」

 ズキッと胸が痛んだ。