「ラティシア……でいいか? ここだとどうもお前が部下だった頃の気分が抜けないんだが」
「ふふ、もちろんです。エリアス室長。今日は手伝いもしますので、なんでも言いつけてください」
「そうしてもらえると助かるよ。じゃあ、早速だがここにあるカルテの整理を頼めるか?」
「はい、かしこまりました」

 積み上がったカルテを名前順に戸棚に戻していく。細々とした雑務をしながら体調に変化がないか注意していたけれどなにも変化はなく、そろそろ昼近くになった。
 国議は午前中だと聞いていたので、フィル様が迎えにくるかとソワソワし始める。

 そこへユーリが申し訳なさそうに声をかけてきた。

「ラティシアさん、すみません。ご指名で治癒してほしいと言われてまして、お願いできますか?」
「……私を指名なの?」
「はい、どうしてかここにいるとご存じのようで、お願いできますか?」

 私はフィル様の専属治癒士だけど、いざという時は誰でも治癒をすると宣言してあるし、フィル様もそれを理解してくれているから診るのは問題ない。

 でも私がここにいることを知っているのは極少数だから、指名と言われたら身構えてしまう。