婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2

 フェンリルとフィル様の毒物チェックが始まって一週間後、私は朝食後にフィル様と治癒室へと向かっていた。この日はフィル様が国議に参加するので、エリアス室長のもとで過ごすことになっている。
 懐かしい職場に笑みを浮かべていると、フィル様がエリアス室長の前まで進んで黒い笑顔で口を開いた。

「エリアス、わかっていると思うけど、ラティが治療するのは女性患者だけだ。決して男は近づけないでくれ」
「事務作業の手伝いをメインに頼むつもりなのでご安心ください」
「うん、それなら安心だね。では治癒室の諸君も()()()()()()よろしく頼むよ」

 その場にいる治癒士たちは高速で首を上下に動かしている。フィル様のあまりのドス黒いオーラに圧倒されているようだった。それからフィル様はくるりと向きを変えて、甘くとろけるような微笑みで私を抱きしめる。

「ラティ。午前中は一緒にいられないけれど、ここで待っていて。国議が終わり次第迎えにくるから」
「わ、わかりましたから、フィル様、どうか離してください」