翌日から食事や休憩で飲食する時は、フェンリルが私の足元に寄り添うようになった。

 毎食ではないがフェンリルが反応して下げられるメニューがある。それはパンだったり、スープだったり、メインディッシュだったりまちまちだけれど、決まって私の食事に毒が盛られているようだった。

 その日は飲み物に毒が混入されていて、グラスも全部差し替えになった。これだけフィル様が対策しても毒物を盛れる犯人とは誰なのか。明確な敵意があることだけは間違いなく、気が抜けない毎日だ。

 人払いされた食堂でフィル様と食後の時間を過ごしていると、珍しくフェンリルが影から現れた。

《なあ、主人。あの毒だけど、普通となんか違う気がする》
「……どういうことだ?」
《毒を盛った奴の匂いも残っててもおかしくないのに、なにも匂わねえんだ》
「犯人の匂いがしない……?」
《ああ、なんかおかしいと思うぞ》
「そうか、わかった。これからもなにかあれば教えてくれ」
《おう、任せろ》

 そう言ってフェンリルはまた私の影の中に潜り込む。フェンリルの嗅覚は幻獣の中でも特に鋭いと聞いていたので、今回の進言は犯人を特定するのに役立つかもしれない。