王太子の婚約者が毒を盛られるなんて重大な事件だ。犯人は相当な罰を受けるに違いない。そうなると貴族のバランスも変わるから、もしかしたらカールセン伯爵家にも影響が出ると言いたいのだろう。

 それに有能で腹黒いフィル様のことだから、もうなにか情報を掴んでいるのかもしれない。私はまだ妃教育の途中でもあるし、政務にかかわることに口出しできる状態ではないけど、相手が無事で済まないことだけは確実のようだ。

 毒だって致死量を摂取しなければなんとかなるだろうし、その知識は自分にもある。今後はフェンリルも注意してくれるし、おかしな味だと思ったら残せばいいのだ。

 それに、あの夢。きっと死の淵にいた私を助けるために、お父様たちは来てくれたのだと思った。
 お父様たちの訃報を聞いてから、ずっとずっと叶わないとわかっていても求め続けていた。会って抱きしめて思いっ切り甘えたかった。

 甘えることはできなかったけど、生前と変わらず私に愛を注いでくれていた。それだけでとても満たされた気持ちになっている。

 だから私はここで毒を盛られて死ぬつもりはない。そんなことに負けたくない。
 お父様たちが見守ってくれているから、きっと大丈夫だと心から思えた。