婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2

「あの日、朝食の後にやたら喉が渇いていました。廊下を歩いていたら、吐き気と手足の痺れに襲われ、幻覚も見えたので毒物を摂取したと気が付きました。でも、助けを呼ぶことができずそのまま意識を失ったのです」
「食事はおかしなところはなかった?」
「……もしエリアス室長の見立て通りだとしたら、アルカロイド系の毒は苦味を感じることが多いので、サラダに毒物が混入していた可能性があります」

 あの朝食で苦味を感じたのは、サラダだけだった。そういう風味かと思ったけれど、味だけでは気が付かなかったのだ。それに葉を刻まれてサラダに混ぜられた状態で出されたら、判別するのはなおさら難しい。

「そう……わかった。今後はフェンリルにも毒物のチェックはさせるから。それと僕も食事や休憩は時間を合わせるから犯人を片付けるまでは、ひとりの時に飲食は控えてほしい。不便な思いをさせて悪いけど、もうあんなラティを見たくないんだ。わかってくれる?」
「わかりました」

 フィル様の心配は当然だろう。毒を盛られた食事を口にして三日間も寝込んでいたのだから、そんなことで安心してくれるなら多少の不便は仕方ない。

 こうしてどこまでも私のことを大切にしてくれる、それがとても嬉しい。