いつの間にか私のお腹に腕が回されていて、背中に感じる温もりがこの世界で一番愛しい人のものだとすぐに気が付いた。

「ラティ」

 耳元で聞こえる掠れた声。その声音は聞いたことがないくらい心許ない。こんなフィル様は初めてだ。

「早く目を覚まして」

 ここで私はハッと我に返る。

 そうだ、私は毒症状が出て意識を失ったのだ。このままここにいてはいけない、そう思った。