『ラティシア、偉いな』
『よく頑張ったね、ラティシア』
「お兄様……!」

 双子のお兄様たちにやっとのことで追いついた。満面の笑みを浮かべたお兄様たちは、私が追いつくとギュッと両サイドから抱きしめてくれる。あの時、屋敷で見送った時のように。そして笑顔のまま暗闇に溶けるように消えていった。こらえきれない涙が頬を伝う。

 視線を前に向けるとお母様が両手を広げて待ってくれている。
 私は涙もそのままで、また駆け出した。

「お母様!」
『ラティシア。幸せになるのよ』

 私の耳元でお母様が囁く。抱きしめてくれた温もりを残して、お母様も闇に溶けていった。お父様は背中を向けたままゆっくりと歩いている。

「お父様、待って!」

 ようやくお父様に追いつき、今度は回り込んで置いていかれないようにした。

『ラティシア。私たちはいつでもお前を見守っているよ』
「お願い、消えないで……!」

 お父様は困ったように微笑んで、私の頭を優しく撫でた。そして、やっぱり暗闇に溶けて消えていく。
 止まらない涙がポタポタと頬を伝って落ちていった。でも私の足元はもう真っ暗闇ではない。背後から差し込む光が、闇を打ち消している。