フェンリルは狼型の神獣だから鼻が利く。いつもと違いを感じたものは、証拠を取ってからすべて処分すればいい。フェンリルなら、なにかを嗅ぎ分けられるかもしれない。

「失敗したら……わかってるな?」
《だ、大丈夫だって言ってんだろ!?》
「それならいい」

 念のためにフェンリルに釘を刺したら、すぐに僕の影の中に入り込んでしまった。若干怯えた様子だったが毒物チェックには問題ないだろう。

「ラティ……」

 ここ数日間、同じベッドに入って眠った。日に日にラティの体温が上がっていくのが感じられて、今日こそは目を覚ますだろうかと期待してはガッカリするのを繰り返している。
 今夜もラティの身体を温めるため、そっとベッドに入って手を握った。

「早く目を覚まして」

 ラティが明日こそ目覚めるように祈りながら目を閉じる。目を閉じる瞬間、視界の端で空間が揺らめいた。でも、この三日間はろくに眠れていなかったから、睡魔に抗えずそのまま意識は闇の中に落ちていった。