「うーん、そうだね。君から見たらそう感じるだろうね。でも君が努力したことは、絶対に無駄にならないよ」
「え……? なんで知ってるの?」
「だって、いつも朝早くから剣の稽古をして、夜遅くまで魔法の練習をしていたでしょう? 君を見かけるたびにそうだったから、すごく頑張り屋なんだと思ってた」

 私が自分を守るために兄のせいにしていたのを、否定もせず受け止めてくれた。そしてなにより、私の努力を見てくれた。それは無駄にならないと、認めてくれた。

 ポロポロと涙がこぼれ落ちて、練習場の床を濡らしていく。

「ゔゔ……! でも、誰も見てくれ、なくて! 父上も……母上も、会ってくれなくて、ボクはもういらない子なんだと……思った……!」

 言葉につかえながら、ずっと胸に溜まっていた澱んだ想いを吐き出した。

「少なくとも、僕は君がいてくれてよかったと思うよ。あんなクソみたいな親の血が流れていても、まともでいられるんだと思える」
「うう、ゔゔゔ……っ!」
「君はよく頑張っているよ」

 そう言いながら頭を撫でてくれた兄の手が温かくて、優しくて。私はしばらく泣いていた。やっと涙が止まって、そういえば兄に名前を呼ばれていないと気が付く。