「——という感じだ。グレイとシアンの結婚式への参加はとてもじゃないが、言い出せないな」
「えええ、いつになったら王妃様に挨拶できるんだよ!?」
「グレイは顔がよすぎるから多分一生無理だ。ていうか、俺もダメなのが納得いかない」
「理不尽かよ! オレ、この顔に生まれて初めて後悔した」

 いつものようにグレイとシアンの三人で近況報告も兼ねて酒場で飲んでいた。念のため、認識阻害と会話が周りに漏れないよう魔道具を使っている。

 フィルレス様は男性の影たち……というかこのふたりをラティシア様へ近づけたがらない。おそらくそれは飛び抜けて見た目がよく、ハニートラップを仕掛けたら百発百中だからなんだと思う。

 俺からすればそんなことを気にする必要なんてないと思うのだが、フィルレス様は心配で仕方がないらしい。いや、他の男に見惚れるラティシア様を見たくないのか?

「影移動しても、すぐにあの狼に邪魔されるからコソッと近寄ることもできないしなあ」
「なあ、アイザック。なんとかなんねえの? 王妃様に挨拶して、お祝いしたいだけなんだけど?」
「ただ主人を祝って、これだけベタ惚れしてる王妃様を見たいだけなんだけどダメなのか?」