僕はベッドに横たわるラティを眺めた。紙のように真っ白だった顔色は、血色がよくなり頬や唇は薄紅色に色づいている。静かに上下する胸元を見て、確かにラティは生きていると実感した。

「僕の目の前でこんなことをするとは……よほど死にたいらしい」

 ざわりと僕の胸の奥で、ドス黒い感情が渦を巻く。
 僕からラティを奪うというのは、それ相応の覚悟があってのことだろう。あれほど僕がラティを寵愛していると見せてきたのに、それでも手を出すのだから。

 まずは誰が関わっているのか調べて、それからついでに反対派の奴らもまとめて片付けようか。
 そういえば、アイザックから国王たちが不穏な動きをしていると報告があった。もっと詳しく探らせよう。害をなすなら徹底的に排除するまでだ。

「フェンリル」
《主人! ラティシアはどうだ?》
「解毒は済んだ。それよりお前、毒の匂いはわかるか?」
《毒の匂いか? 当然だ! 幻獣一の嗅覚だからな》
「今後はラティの食事に毒の匂いがしないかチェックしろ」
《おう! 任せておけ! オレたちのラティシアは絶対に守ってやる!》