婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2

 ヒューデント王国で最も由緒ある大聖堂の鐘が鳴り響く。

 私は鐘の音に合わせて、バージンロードを一歩ずつ進んでいる。父親代わりにエスコートしてくれているのは専属治癒士となったエリアスだ。緊張した面持ちで正面を見据えている。

 純白のウエディングドレスは首元まで複雑なレースで飾られ、ソフトマーメイドのラインが上品さと清白さを漂わせていた。ロングベールはウエディングドレスの長い裾と重なり、格式高い結婚式を印象付ける。

 イヤリングとティアラにはフィル様の瞳の色であるブルーダイヤモンドが贅沢にあしらわれ、私が誰の妻になったのか参加者たちに見せつけていた。

 太陽の創世神を祀る聖堂は色鮮やかなステンドグラスが美しく、幻想的な光景を来場者に披露している。そこから差し込む光が大理石の床を淡く照らしていた。

 そんな大聖堂の美景すら霞むほど、フィル様が神々しい。鍛えられた躯体でシルバーのフロックコートをすっきりと着こなし、艶のある黒髪と空色の瞳を引き立たせていた。

 私へ真っ直ぐに向ける視線は優しくて甘くて、でもその瞳の奥に激情が渦巻いている。弧を描く口元は満足げで、私がフィル様のもとへ辿り着くのを待ち望んでいるようだ。