婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2

 エリアスはラティの親に近い存在だ。カールセン家を追い出され、なんとか務め始めた治癒室で孤独だったラティをとても気にかけていたと聞いている。

「必ず、ラティシア様を守り抜くと。必ず、あの子を幸せにすると」
「そんなこと、言われるまでもない」

 誰よりもラティを愛して、大切にしているのはこの僕だ。ラティがいない世界など壊したって構わないと思っている。

「では、次にこのようなことがあったら……ラティシアを解放してください」
「……二度目はない」

 ラティを手離すなんてできるわけがない。
 僕はラティには決して見せない冷酷無慈悲な表情で、エリアスを見返した。

「そんなこと、この僕が許さない。たとえ相手が世界だろうが、神だろうが、敵なら排除するだけだ」

 そんな僕の変化を目の当たりにしたエリアスは、ゴクリと生唾を飲み込む。ようやく僕の本心を理解したのか、納得した様子で口を開いた。

「……わかりました。差し出がましいことを申しました」
「いや、君の気持ちはわかる。ラティの父親代わりとして世話してくれていたと知っているよ」

 パッといつもの僕に戻って、重苦しくなった空気を変えた。安堵のため息をついたエリアスはまた明日来ると言って、寝室を後にして治癒室へと戻っていった。