「待ってください、いつから王妃教育だったのですか!?」
「うーん、ラティが毒を盛られてからかな。あの時点で犯人の目星もついていたし、国王を排除するって決めてたから、早めに終わらせたほうがいいかと思って」
「そ……そんな前から……」

 私はガックリと肩を落とした。

 てっきり今後は王妃教育が始まり、政務をこなしながら乗り越えていくのだと覚悟を決めていた。教育が終わっているならそれはそれでいいことだけど、なんだか釈然としない。

「フィル様、今後このような隠し事はしないでください」
「えー、楽しみがひとつ減っちゃうな……ラティの驚いた顔も愛しくてたまらないんだけど」

 後半はいいとしても前半がいただけないし、こんなことを楽しまないでもらいたい。

 半眼でフィル様を睨みつけると、眉尻を下げて困ったような笑みを浮かべる。「ラティ」と私の名を呼び、風魔法を器用に操って私をフィル様の膝の上に座らせた。

「ごめんね。あの時は情報規制も必要だったから、きちんと説明できなかったんだ。それに妃教育の進捗具合を見ても、ラティなら難なくこなせると確信していたよ」
「では、これからは秘密はなしにしてください。これでも私は王妃なのです。口にしても問題ないことと、そうでないことの区別はつきます。どうしても言えない場合は、事情があって話せないとおっしゃってください」