婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2

 すっかり解毒できたと太鼓判をもらえたのは、それから三日後のことだった。

「うん、もう毒は残っていないので、明日か明後日には目覚めるでしょう」
「そうか……よかった……ラティ」

 震える手でラティの細い指を掬い上げる。温もりを取り戻しつつある指先にホッとして、そっと口付けを落とした。

 早く目を覚まして、あのアメジストの瞳で僕を見つめてほしい。
 僕の暴走しがちな愛情表現を時にはたしなめて、最後には受け止めて。
 そして柔らかな微笑みで僕の名を呼んでほしい。

「フィルレス殿下。失礼を承知で申し上げてもよろしいでしょうか」

 エリアスが眉間に皺を寄せて僕を見据えている。鋭い視線には、わずかな敵意がにじんでいた。僕は視線でその先を促す。

「ラティシア様は……どんな逆境でもあきらめずに、前を向いて歩くようなお方です。きっと毒を盛られたとしても、そんなことで逃げるような性格ではありません。これまでだってしなくてもいい苦労をしてきた子なんです。ですから、ここで誓ってください」

 射るような視線が僕に突き刺さった。