フィル様とともに私の私室まで戻ってきた。

 国議ではずっと神経を張り詰めていたので、こわばっていた身体から力が抜けていく。メイドにお茶を入れてもらって、フィル様と並んでソファーに腰を下ろした。

「それで、な——」

 私が話をしようとしたけど、それはフィル様の熱い口づけに塞がれて言葉を続けることができなかった。

「待っ……フィルッ……!」

 何度も角度を変えて落とされる深い口づけから逃げようとしても、すでにフィル様の(たくま)しい腕が私の後頭部と背中に回されて身動きひとつできない。

 そのうちフィル様の熱が私にも伝染して、反抗する気力も力もなくなった。
 やっと離してもらえたと思った頃には、頭の中までとろけきってまともな思考ができない。

「待たない。ていうか、もう待てない。キスだけじゃ足りない」

 フィル様の空色の瞳に浮かぶ劣情が、私の本能をくすぐった。全身で私を求めるフィル様に応えたいと、身体の奥から湧き上がる衝動に身を任せてしまいたくなる。

 かろうじて残っていた理性が寸前で待ったをかけた。

「でも、結婚式はまだ……」
「ラティはもう僕の妻でしょう?」