婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2

「試すようなことをして悪かった。では当日の配膳でなにか変わったことはなかったか?」
「いいえ、疑うのは当然のことです。ですが当日運んだお食事は、どれも毒入りではございませんでした」
「だとすると、僕の目の前で毒を盛ったことになるのか……?」
「あ、気になることといえば、お食事を運んでいる時になにかの気配がしました。実際は誰もいなくて、鑑定眼でも変化が見られなかったので気のせいかと思ったのですが……」

 アンバーは鑑定眼が使える影で、あらゆる物の本質を見抜く。物に込められた念まで読み取り、悪意なども敏感に感じ取るのだ。

「それはラティに向けられた悪意か?」
「悪意ではなかったです。どちらかというと、後ろめたさというか……そんな感じでした」
「ふうん……後ろめたさね……」

 それがラティに毒を盛った犯人に繋がるかわからない。
 ただアンバーが感じ取ったなら、そこになんらかの事象があったいうことだ。

 そんな簡単に答えは出ないか……。

 深いため息をついて、毒の入った紅茶からゆらゆらと上る湯気を眺めていた。