「はい、確かに広範囲に火炎魔法を放っていただき魔物は討伐されました。しかし、その後山火事へ発展し、私たちが出立する前日まで消火活動に追われていたのです。また森が焼き払われたことによって、棲家を失った魔物が街まで降りてきて復興がままならない状態です」

 それでは、せっかく魔物を討伐してもデメリッも無視できない状態だ。治癒魔法で笑顔になった領民たちがつらい思いをしているのは、私も胸が痛む。

 ここでコートデール公爵が言葉を続けた。

「我らは森で魔物の討伐をする際は、火炎魔法の使用を制限しております。もちろん完璧にコントロールできるお方であればなにも言いますまい。だが未熟な魔法によって領民が被害を受けるのは、領主として看過できませぬ。それでも今回は認定試験ゆえ、ここでお伝えするだけに留めました」
「待ってよ! 火炎魔法が制限されているなんて、聞いてないわ!」

 ブリジット様は立ち上がって自身の潔白を訴えた。そんなブリジット様に対し、オリバー様は悲しげな視線を向ける。

「ブリジット様、私はこちらの討伐の資料や口頭でもお伝えしておりました。討伐に参加される方にお渡しする書面にも、同様のことが書かれております。こちらはすべて読まれたとサインもいただきましたが……本当に残念でなりません」