「これもコートデール公爵のご息女ジャンヌ嬢と婚約を結ぶことができたからです。ヒューデント王国との繋がりを大切したいという、皇帝陛下のお気持ちにより実現しました」
「さようでございますか……」

 ここまでアトランカ帝国とヒューデント王国の繋がりを強調されたら、グラントリー様が提示する資料に対して意見できなくなる。

「こちらが皇族に伝わる創世記です。月の女神の末裔は先ほど述べた身体的特徴と、万病を癒し、失われた手足すら再生する特殊な治癒魔法を操ります」

 もし意見したなら——

「そんなバカな! いくらなんでも失った手足まで再生できるわけがな……」
「オズバーン侯爵。私の発言及びこの文献が虚偽だと言いたいのか?」
「ですが、治癒魔法でそのようなことができるなど、聞いたことがありません!」
「それはつまり、ヒューデント王国はアトランカ帝国が信用に値しないと言うのだな?」

 ——両国の信頼関係を疑うのかと、外交問題に発展してしまう。
 慌てた国王陛下がオズバーン侯爵を諌めた。

「オズバーン、其方は許可があるまで口を開くな!」