この国議の主導権はすでにフィル様が握っており、淡々と事実確認を進めていく。

「まず、この世界には太陽の創世神、月の女神、大地の神がおられることは皆様もご存じでしょう。その末裔には神々の血が受け継がれ、身体的特徴が発現するのです。太陽の創世神は黒髪に空のような碧眼。大地の神は桃色の髪に翡翠の瞳。そして月の女神は月光のような白金の髪に、紫の瞳。まさしくラティシア嬢の外見的特徴と一致します」

 会議室の貴族たちが「まさか……」「事実だったのか」と驚きざわめいた。だが、ここで黙っていてはまずいと思ったのか、オズバーン侯爵が反対意見を述べる。

「ですか我が国にあるのは信憑性の薄い古びた文献のみで、確固たる証拠などありません。グラントリー殿下はそちらもご提示できるとおっしゃるのですか?」
「もちろんです。アトランカ帝国の皇族のみが閲覧できる文献を、特別に許可を取り帝国から取り寄せました。こちらが正式な書類であるという皇帝陛下のサインと国璽です」

 文献と一緒に提出された書類には、アトランカ帝国の皇帝陛下のサインが記され国璽も押されている。少なくとも、この文献をアトランカ帝国が認めている証だ。