「フィルレス様っ!!」

 執務室に戻り、どうやってオズバーン侯爵たちを追い詰めるか思案していると、アイザックが息を切らして入ってきた。

「アイザック、どうし——」
「ラティシア様が毒を摂取し、お倒れになりました」

 一瞬、聞き間違いかと思った。タチの悪い冗談だと思いたかった。でも、アイザックの悲痛な表情に嘘はなく、現実なんだと理解する。
 その報告を受けて、気が付いたら走り出していた。

 ——嘘だ、嘘だ、嘘だ。

 ラティが毒を盛られただって?
 僕の目の前で毒を口にしていただって?
 そんなことありえない。毒には僕も常に注意を払っている。食材も食事を作る場所も、コックも食事を運ぶ使用人たちもすべて僕自ら選び抜いた人材だ。
 それにラティにつけた専属メイドは、僕の専属の影で毒が入っていたなら鑑定眼でわかるはずなんだ。あの場にもいたし見落とすなんて考えられない。

 それなのに、毒を盛られた……?