フィル様の婚約者として誰がふさわしいのか、今日の国議で決定される。そのため普段は国議に参加しないような地方の貴族たちも招集され王城に集まっていた。

 朝の準備を済ませ、私はバルコニーから王都の景色を見下ろす。

 空は青く澄み渡り、冬の寒さを運ぶ風が私の頬をかすめていった。今日の国議の内容によってはこの景色も見納めかもしれないと、心残りがないようしっかりと目に焼き付ける。

 フィル様との朝食も味わって食べたし、毒物チェックという名目の口づけも心に刻みつけた。

 本当はどんなことをしてもフィル様の隣にいたい。立場も忘れて嫉妬するほど好きで好きでたまらないし、私以外の誰かと並んでいるところなんて見たくない。どんなに努力しても、どんなに誠実であっても、大切なものほど私の手からこぼれ落ちていく現実に押しつぶされそうだった。

 もしブリジット様が認定試験に合格して、国王陛下が聖女の方がフィル様の婚約者にふさわしいと言って正式な発表をされたら抗うことはできない。

「ラティ、準備はできてる?」