婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2

「それではこちらにおかけください。お茶をご用意します」
「せっかくですから、こちらの焼き菓子もいただきませんか? ひと口サイズのフィナンシェでとても人気の商品なのです。特にピンク色のストロベリー味はジュレが仕込まれていて絶品ですわ」
「そうですね、せっかくですからいただきましょう」

 それから認定試験の話や聖女の仕事について穏やかに会話し、何事もなくお茶の時間は終わった。勧められたピンクのフィナンシェもおいしくて、フェンリルも出てこなかったから問題ないようだった。



 妃教育も終わりフィル様と夕食の時間になり食堂に向かうが、どうも体調がすぐれない。吐き気と腹痛に襲われ、食欲がない。どうにか食堂に来たけれど、このまま部屋へ戻ろうとフィル様へ視線を向けた。

「ラティ、顔が真っ青だよ!?」

 目が合った途端フィル様が駆け寄ってきて、私を抱き上げていつも食後にくつろぐソファーへそっと座らせてくれた。

「すみません、吐き気と腹痛で食事は……」
「吐き気と腹痛? ラティ、この食堂以外でなにか口にした!?」

  フィル様が必死な様子で話しかけてくるけど、腹痛も強くなり脂汗が額に浮いている。