婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2

 ブリジット様は反論しかけたが、意外と素直に礼節をわきまえた挨拶を述べた。

「ごきげんよう、ブリジット様。本日はどのようなご用件でしょうか?」
「はい、先日街でかわいらしい焼き菓子を見つけたので、ラティシア様へお贈りしたく持ってまいりました」
「……カラフルでかわいらしい焼き菓子ですね。ありがとうございます」

 妃教育の賜物で微笑みを浮かべているが、正直なところフィル様と食事する以外で食べ物を口にしたくない。ブリジット様は私を排除したくてたまらないはずだし、先日の王妃様に冤罪をかけられそうになった件もある。

「いいえ、明日はわたしの認定試験の結果発表ですし、最後になるかもしれませんのでお話もしたかったのです」

 確かに明日の国議で私がこのまま婚約者としていられるのか、それともブリジット様へ変更するのかはっきりする。それは嘘偽りのない、審判(ジャッジ)による判定だ。

 もしかしたら認定試験を受けてブリジット様にも心境の変化があったのかもしれない。私だって試験の最中に、フィル様に対する気持ちもなにもかも大きく変化した。