「次、バッド・キャロウ伯爵。再度治癒室へ行き、治癒魔法をかけた後の対処に不満があると?」
「そ、そうです! あんな周囲に人がいる治癒室でカーテンだけで区切ったところで全裸になれなど、侮辱以外のなにものでもないです!」
「これは治癒室のマニュアルだ。エリアス室長から預かってきた。五十四ページの十行目を読め」
「……なお、再治療の際は治療後に二名以上の治癒士立会いのもと患者の全身を確認し、完治証明にサインをもらうこと」
最後の方はボソボソとしていて聞き取りにくかったが、内容が伝われば問題ない。青ざめた顔でマニュアルを握りしめているキャロウ伯爵へ、僕は容赦なく追い打ちをかける。
「ラティはマニュアル通りにしただけだ。マニュアルに不満があるならエリアスに話を通すが?」
「い、いえ……ですが、あのような場所でカーテンのみで区切られた場所で——」
「二十八ページ、十五行目」
「患者からの希望があった場合は、状況に応じて個室や特別室を使用すること」
「で、希望は出したのか?」
「いえ……」
その後も次々におかしな点を指摘していたら、室内は痛いくらいの静寂に包まれた。こんな杜撰なクレームでラティが悲しんだかと思うと、はらわたが煮えくりかえる。
「そ、そうです! あんな周囲に人がいる治癒室でカーテンだけで区切ったところで全裸になれなど、侮辱以外のなにものでもないです!」
「これは治癒室のマニュアルだ。エリアス室長から預かってきた。五十四ページの十行目を読め」
「……なお、再治療の際は治療後に二名以上の治癒士立会いのもと患者の全身を確認し、完治証明にサインをもらうこと」
最後の方はボソボソとしていて聞き取りにくかったが、内容が伝われば問題ない。青ざめた顔でマニュアルを握りしめているキャロウ伯爵へ、僕は容赦なく追い打ちをかける。
「ラティはマニュアル通りにしただけだ。マニュアルに不満があるならエリアスに話を通すが?」
「い、いえ……ですが、あのような場所でカーテンのみで区切られた場所で——」
「二十八ページ、十五行目」
「患者からの希望があった場合は、状況に応じて個室や特別室を使用すること」
「で、希望は出したのか?」
「いえ……」
その後も次々におかしな点を指摘していたら、室内は痛いくらいの静寂に包まれた。こんな杜撰なクレームでラティが悲しんだかと思うと、はらわたが煮えくりかえる。



